閉所が苦手と言われたら?

MRI

MRIで常につきまとう問題が

 

 

閉所が苦手であの筒の中に入りたくない問題

 

 

である。

 

 

 

この問題のせいで必要な検査をうけられない”不利益”をこうむる人は少ないながらもいる。

そのような不利益を少なくするために、我々技師にできることはなんだろうか?

 

 

ある報告では、

MRI検査を受ける中でおよそ1.97%が閉所恐怖症患者で1.22%がMRI検査を中断する

1)Iris Eshed MD, et al. “Claustrophobia and premature termination of magnetic 

resonance imaging examinations”, JMRI, Vol. 26, no. 2, pp. 401–404, August 2007

 

とされている.

 

オペレータとしては

わたし、狭いところが苦手で・・

 

と言われて

 

そうですか で済んでしまっては、

  • 検査中断により患者さん本人に申し訳ない思いをさせ
  • 怖さを持ち帰らせ
  • 検査中断により情報が欠落し
  • 外来検査フローも圧迫

などが連鎖的に発生するだけでなく、そもそも不安を吐露されて何もしないでは名折れも名折れである。

 

実際のところ、最終的に苦手なものはしょうがないにいきつくが

それでもやれることが何かあるはずと思い日々取り組んでいる。

 

Twitterでも書いて、すこしいいねが多くついたが

https://twitter.com/klarrrk_man/status/1375027416960172033?s=20

 

 

取り組んだことで患者さんが喜んだり、安堵してくれると大層飯がうまいので

皆さんにもこの”メシウマ”を共有したいと思う。

 

断っておきたいのが、狭いところが苦手=閉所恐怖症ではなく、

病名がつくと医学的にシビアな話になるので、本法ではあくまで区別して書くこととする。

 

 

一口では表されない

苦手なものの要因をひとまとめにされて納得できる人はいないでしょう。

 

絶叫マシーンが苦手なひとに、

「苦手な人はみーんな、『あの一瞬で終わるのに値段が高いところが苦手』っていうよね」

といって納得しないのと同じである。

 

ほら、Twitterでも決めつけは危険って言うでしょ?(違

 

人ぞれぞれで苦手ポイントが異なって当然であり、

さながらウイルスに対する抗体のように、

この苦手ポイントAに対してはこれ!Bにはこっち!Cにはあっち!と

手数を増やすのが肝要と思われる。

 

管理人が以前に、MRIが苦手な方の体験談などを記載したブログを20サイトほど閲覧すると以下の共通事項が挙がった。

 

苦手だと感じた原因

 

自分に有効だと感じた対処方法

 

 

ごらんのようにバリエーションが豊富であり、人によって原因も対処も分かれる

 

 

中にはどうしようもないものもあるが、概ね工夫次第で対処できるものが多い。

 

 

検査時の工夫ーノンテクニカルアプローチー

医療安全の中ではノンテクニカルスキルという言葉があるが

これは認知的,社会的,または個人的資質に関するスキルである。

特別な知識を必要としないが、human factorを理解しながらそれぞれの現場に合わせることが重要である。

 

ほら、もうピンときたのではないでしょうか??

 

個々人の対応が違う中で、ノンテクニカルスキルを活用したアプローチが役にたつと思われます。

 

前述したグラフを眺めながら、それぞれに対してどのように動けば解消できるかを考えてみましょう。

 

検査前

  • 1度、検査室の中を見るか選択する
  • ガントリーの奥の照明をONにする
  • 送風機構をONにする(寒くなければ)
  • 視点が合うようガントリ内にマーキングをする
  • 人により入室の時点で目隠しをして案内する

 

ポジショニング時

  • ガントリーの奥行きを見せる
  • 断定した言い方を避ける
  • 狭いところが苦手だという話をしっかりきく
  • アイマスクを勧める
  • 非常ボタンを持たせる
  • モニターで見てるから何かあったらすぐに来ますと伝える
  • 恐怖をいつも感じる姿勢と異なるようにする
  • 体の落下防止固定バンドは過度に締め付けすぎない

 

検査中

  • 残り時間をこまめに伝える
  • パニック時を想定し、且つその時二次被害を防ぐためできれば二人で対応する

 

 

また、不安を吐露され、

 

 

もう、どうしたらいいかわかりません。なんとかなりませんか?

 

と聞かれたら

 

 

管理人は以下の事柄を

 

 

「狭いところが苦手な方の中では、このような方法を取られている方もいるようですよ」

 

とあくまで押し付けではなく情報の提示をする形で勧めている。

 

  • 数を数える
  • 頭の中で歌を歌う
  • 呼吸を数える
  • 深呼吸をしておいてもらう
  • 手をにぎる人を同伴させる
  • 室内に家族にいてもらう

 

 

患者用のMRI時対応案内文書

不安に駆られていると、どうしても少しでも情報を集めたくなるだろう。

これはMRIにかぎらず、あらゆる生活の場面で共通する。

私だっていつも炎上しないかチェック

 

なので検査を行う上で事前に全体像を把握でき、自らでどこまでがコントロール可能なのかがわかるような説明文書を予約時の段階で渡している。

 

記載内容は以下である。

  • 「当院では閉所が苦手な人に配慮しています」という宣言
  • 事前相談が可能です
  • 呼び出しブザーを持ちます。
  • 検査中こまめに残り時間をお伝えします。
  • 検査機器内の照明を明るくします。
  • ご希望の方は以下の事項を行うことができます。

→ 検査室内への家族の同伴(検査部位によっては手を握っていることも可能です)

→ 目隠し(タオルやアイマスクなどを用意しています)

→ 防音(耳栓やヘッドフォンなど種類を用意しています)

 

 

このように事前に情報を得ることにより心の準備が可能になると考えている。

また、同様の案内を受付やホームページに記載し、目に付く箇所を増やしている。

 

なぜなら、情報社会の今、アクセスできない情報は無いに等しく、行われていないに等しいからだ。

 

ここで重要なのは、あたかもプラセボのエピソードのように、配慮していると宣言することで心理誘導することである。(実際してないわけじゃないよ!笑)

 

暗がりにいるときに、「ここはあなたの部屋」だといわれるのと、「あなたは誘拐されて見知らぬ部屋にいます」と言われるのでは、同じ暗がりでも心への影響は異なるだろう。

 

 

検査前の抗不安薬処方適用フロー

こちらはあくまでもそれぞれの病院で精神科医と連携をとり決めるのが望ましい。

 

患者さんの情報として参考としているのは以下であり、基本的に内服を主としている。

・発作の有無

・検査の必要性

・本人希望

 

 

 

閉所恐怖症患者用の問診票

平時のMRIでも多くの病院で問診票は活用されていると思われるが

閉所が苦手な人用にも用意しておくとよいでしょう。

 

この問診票の目的は

 

「されるがままではなく、ある程度自身で場をコントロールする余地を提供することから、自らで検査に向かう覚悟を構築してもらう」

 

である。

 

内容としては下記を採用しチェックボックス形式で任意の希望を聴取している。

  • 目隠しをしたい(アイマスク・タオルをのせる)
  • 入室の時点で機械を見えないよう誘導してほしい
  • 検査前に一度検査室の中をみたい
  • 家族と検査室の中に入りたい
  • 家族に検査中、手や足など触れていてもらいたい
  • 通常の検査方法で良い

 

 

このように問診で患者個々の特性に配慮すれば検査全体のワークフローもスムーズとなる(ここ大事!w)

 

 

撮影プロトコルの追加

体位

 

閉所が苦手な方の中では、

腹臥位なら不安感が軽減する

1)Iris Eshed MD, et al. “Claustrophobia and premature termination of magnetic 

resonance imaging examinations”, JMRI, Vol. 26, no. 2, pp. 401–404, August 2007

 

という報告もある。

 

腹臥位では主に四肢やその他骨格系が行いやすい。

また皮膚表面の軟部腫瘍なども影響を受けにくい対象である。

これはノンテクニカルスキルではなく、極めてスキルのいる技術である。( ^ω^ )ドヤァ

 

しかし腹臥位となることで、重力による臓器の位置変化が仰臥位と異なることは、読影に影響を及ぼすため、事前に依頼医や読影医とコンセンサスを得なければならない

(よって最初から安易に提示せず、他のアプローチをした上でダメだったときに考慮する)

 

初学者で盲点なのが、腹腔内臓器だけに着目することであり、脳や馬尾神経なども重力による影響を受け得るため注意が必要である。

また、どの部位においても液体貯留がある場合は、当然のことながら水平面が変化したり、造影後の膀胱内造影剤貯留も変わるため細部まで気を配る。

 

それでも検査が可能になること自体が大きなベネフィットを見いだす状況があれば、技師側はプロトコルを整備しておくとよいでしょう。

 

方向

多くの装置で可能な工夫の一つで

足側からガントリー(MRIのつつの中)に入っていくようなプロトコル構成にすることである。

 

これは姿勢を変えなくてもよいため上述よりぐっとハードルは下がる。

 

古い装置でも体幹部や下肢は対応できるところが多いのではないだろうか。

 

新しい装置では全身に対応できるものもあるため可能であれば、頭からと、足からの2種類対応できるようにすることが望ましいだろう。

 

管理人の施設では、可能なものは平時から足側から入っていくもので運用しているため、特に切り替えはない。(普段からそうすることで、より多くのスタッフが対応できる)

 

 

 

パニック時の対応フロー

もしものときに備えて、患者さんがパニックになったときのことも想定しておいた方が良い。

 

管理人の所属では、強い不穏や、動悸・胸痛・窒息感・めまいのいずれかが存在する場合などは担当医に連絡することとしている。

 

 

またその際は、患者さんの不安が強い状態であるため体動が予想される。

場合によっては高い寝台から無理に降りようとすることも考えられるため、二次被害などが起きないよう、可能であれば2人以上で対処することが望ましい。

 

 

おまけ:機械そのものの機能

古くより、多くの機械メーカーは患者さんに優しい機械をつくるため試行錯誤を繰り返してきた。

 

例えば、頭にかぶせるコイル(頭部検査)は、昔から目のところに鏡が配置されており、足元がみえるようになっている。

 

最近では様々な機能にあふれており、そのいくつかを紹介する。

 

 

 

まず室内照明だが、従来はMRI室というものは蛍光灯がノイズを発生させ画像に影響を及ぼすため使用できず、ハロゲンランプが用いられてきた。そのため非常に暗く、ただでさえ閉塞感がただよう中、それを助長させていた。

しかし技術進化と共に、現在ではLEDを使用できるようになり、室内が明るくなっているところも増えている。

 

 

次にガントリーの中の工夫だが、映像を映し出すのが現在の主流だ。

 

*Canonメディカルシステムズ

頭の上にある鏡を通して、頭頂側にプロジェクターで映し出された映像を見るもの

https://jp.medical.canon/News/PressRelease/Detail/12038-834

 

*Philipsエレクトロニクス「In-bore Experience」

ヘッドコイルに取り付けられた鏡で壁面に映し出される映像を見ながら,また,ヘッドホンで音楽を聴きながらMRI検査を受けることができる。

https://www.philips.co.jp/healthcare/resources/landing/campaigns/the-next-mr-wave/mri-in-bore-experience

(これは管理人も体験したが、非常に快適であった)

 

 

また壁に装飾をほどこしたり、装置そのものをファンシーにする工夫をとっているところもある。

例えば江戸川病院などの象のガントリーカバーは有名である。

https://www.eureka-dolls.jp/data/data_original_character_086.html

 

 

*GE Healthcare japan

などでは、装置の外側が光るようにしている(各社も似たような感じかもしれないが)
https://www.e-radfan.com/item-jrc2012-pro/17097/

ちなみに光はON-OFFが任意でできる。

この光らせる意味は「ミュラーリヤー錯視」と言われ、躯体を小さくみせる効果がある。(目元の化粧などでもよく聞く)

管理人は圧迫感を感じさせないため、小児や閉所が苦手な人に対しては光らせるようにしている。

 

 

天井に映像パネルをはめて部屋そのものを広々と錯覚させる作りもある。

*Sky Factory Japan

https://www.japan.skyfactory.com/products/

管理人の施設には上記のようなものはなく非常にうらやましい限りであるし、きっと患者さんとしても快適さを感じるだろう。

 

 

管理人の施設フロー

上記の大まかなところを抜粋すれば、このような流れをとっている。

参考となれば幸いである。

 

予約を経たのち

Drによる閉所恐怖症の有無の確認を行う → アリ → 坑不安薬処方フロー

↓ナシ                       ↓

閉所が苦手な人用の案内文書を手渡す         ←

閉所が苦手な人用の問診票を加える

検査時の工夫

ポジショニングの工夫(体位の判断)

検査中の工夫

問題 → アリ → パニック時の対応フロー

↓ナシ

終了

 

 

まとめ

 

  1. 対応をよりオープンに ; 患者側の気持ちの準備
  2. 選択を増やし、具体的な対応や患者さんに勧める言葉を事前に協議
    → 経験年数によらず安心感を高められる
  3. 抗不安薬の選択やパニック時の対応
    → 検査前から後まで恐怖感に対するバックアップ

 

興味深いことに、閉所の不安について

スタッフのトレーニングにより不安は軽減する

1)Susan J Grey, et al. “Reduction of anxiety during MR imaging: 

a controlled trial”, MRI, Vol. 18, no. 3, pp. 351–355, April 2000

 

とした報告もある。

まずはやってみて、回数をこなすことも重要である。

 

 

不幸なことに、1991年にはMRI検査で閉所恐怖症が悪化したと報告されたこともある。(第3回 日本総合病院精神医学会.1991)

 

また、1997年の時点では

成人の閉所恐怖症患者のMRI検査において, 14.3%が鎮静を必要とした

Kieran J.Murphy, et al. “Adult claustrophobia, anxiety and

 sedation in MRI”, MRI, Vol. 15, no. 1, pp. 51–54, 1997

 

とも言われている。(たしかに昔のMRIは時間も長く恐怖を感じてもおかしくはないが)

 

 

我々オペレータとしても苦い歴史でもありショッキングでもあり、余地があるようにも思える。

 

このようなことが起こらないよう、更なる工夫を凝らしたいものである。

 

 

おしまい!

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