生態系での物質循環はどのような仕組みを形成しているのか。
エネルギーの流れは物質の流れと同じなのか。
多くの生物は相互に連携しあって生きている。
その相互関係を把握しておくことは想像のベクトルを補正することに有効だ。
我々の社会において、エネルギーは解放系だが物質は閉鎖型だったりする。
ただ地域に限定するとエネルギーも物質も閉鎖していることもある。
また食物連鎖などはテレビなどで見るほど単純ではなく、複雑なネットワークを形成していることが知られている。(食物網)
さらに、我々も含めて多くの生物は共生しあっている。
例えばだが、牛は胃を4つもっていて貯蔵と消化の場所が違う。
牛の胃に存在する微生物が食物を分解してくれて、子供が生まれた際には親からの食物の口移しで微生物が渡る。(これをルーメンという)
このように一つの生き物の中だけで驚くべき関係が存在するのだ。
生物の分け方
生物を大きく分けると
独立栄養生物と従属栄養生物に分けられる。
『独立栄養生物』(生産者)
多くの植物・光合成細菌・化学合成細菌
『従属栄養生物』(消費者・分解者)
動物・寄生性植物・多くの菌類、細菌
従属栄養生物は他の生物ないしは他の生物の生成物を食べてエネルギー・栄養を得る。
→ 食うー食われる(被食捕食)関係をもつ
そのため、『口』があることは従属栄養生物であることを示している。
食物連鎖の種類
『生食食物連鎖』
生産者を起点とした被食ー捕食関係の連鎖である。
例を言えば
植物プランクトン(生産者)
↓
ミジンコ(一次消費者)
↓
アミ(二次消費者)
↓
クジラ(高次消費者)
のような関係が挙げられる。
『腐食食物連鎖』
デトリタス(腐ったもの:難分解性)を起点とした食物連鎖である。
排泄物・遺骸・枯死体を細菌等が分解して形成される。
例を言えば
デトリタス(分解者)
↓
ヨコエビ
↓
魚
↓
サギ
下水処理や活性汚泥は社会システムを用いて腐食食物連鎖につなげるものである。
大規模な社会構造も生態系へと糸口がつながっていることは生命の繋がりと共生を感じるとともに、日常で必要ないと感じる知識も自分の生活につながっていると言うのが実感される。
生態ピラミッド
1、個体数ピラミッド
捕食者と被食者では体のサイズが異なるため栄養段階が上がると個体数が減少しピラミッドを形成する。
しかし寄生生物においては、寄生者が栄養をとる点でいえば体は小さくても栄養段階的に上位にくる。しかし個体数は多いため個体数ピラミッドは逆転する。
2、生物量ピラミッド
一定面積内に存在する生物の量。
生物量=個体の重量×数
によってきまる
栄養段階が上がると生物量は減少すると言われる。
例外的に、動物プランクトンと植物プランクトンはこの関係が逆転する。植物プランクトンは短期に成長や死滅を繰り返すので動物プランクトンより栄養段階は下位にくるが生物量は小さくなる。
3、エネルギーピラミッド
一定面積内の一定期間内において獲得するエネルギー量。
植物は光合成でエネルギーを合成するが、呼吸で消費するエネルギーを差し引いて計算される。
動物は食物から得るエネルギー量である。
栄養段階が上がるとエネルギー量は小さくなる。
ここのピラミッドは逆転しない。
参考:ベネッセ教育情報サイト
ピラミッドで問題となるのが生物濃縮である。
→ 植物は1/10量の草食動物を養い、草食動物はその1/10量の肉食動物を養います。
これが「10%の法則」です。
底辺の生物(植物など)に有害物が含まれた場合、それを食べる上位の生物中では濃度が10倍に、その上の食物連鎖の動物の体内ではさらに10倍に、4段階の食物連鎖では10の4乗、1万倍に濃縮されます。
守山 正樹. 環境保健1 : 環境とは・生態系・食物連鎖・生物濃縮・環境汚染・公害・地球環境問題. 2014
疎水性・難分解性の物質は脂質に蓄積されやすいとされる。
そして栄養段階があがるにつれて生体内の濃度が増していく。中には骨や殻などに蓄積されやすい物質もある。
マグロは元来嗜好品とされるが水銀の含有量が高いことが知られている。食品基準より高いレベルであるのだ。
したがってマグロを食べ過ぎるのは生物濃縮上控えた方が良いのだが、これは日本人だけの問題かもしれない。
化学的循環
化学的循環を考える上で重要なのが
1、リザーバー
2、交換プール
3、食物連鎖による循環
である。
これらは我々人間の構造にも繋がる。
主なものは2つ。
『ガス循環』と『堆積循環』である。
例をあげると石油、石炭、カーボンなどである。
リザーバー(石油)などを使うことでCO2が増えることはよく知られている。
ちなみにカキなども炭酸カルシウムであり、海だった箇所では掘り起こして使っているところもある。
これらはいわゆる堆積循環である。
水の循環
人を構成する水は60-80%と幅がある。
(義務教育レベルには70%だが、それはあくまで平均値であり、実際はバリエーションがある)
主な流れとしては
海水 → 水蒸気 → 降雪・降雨 → 表流水(河川)、伏流水、地下水、湧水 → 海へ
という流れを辿る。
ほとんどが海へむけた循環であり、淡水というのは全世界の水供給のわずか3%程度しかない。
では人の体の水を考えると何がみえてくるだろう?
よく子供は熱が上がりやすいというがそれはなぜなのかも水が関係する。
大人に比べて体の水の絶対量が少ない子供は熱が上がりやすい。
それに加えて体重あたりの表面積が大きいので、熱も下がりやすい。
また水で代表的なのは、『海水を飲むとダメだ』といわれたことはないだろうか。
それの何が問題なのだろうか?
よく知られているのが、海水の浸透圧は人体の水より高いから逆に体から水分が抜けて脱水となるというものである。
それもひとつあるが、さらに重要なのは海水の中にある微量元素(Moなど)が人体にとって毒になるので脱水よりも先にそちらで体がダメになるのだ。
生体の循環
水の次に人体に存在するのはタンパク質である。
いわゆる魚の干物などは水が抜けてタンパク質の塊となっている。
次は脂質 核酸 炭水化物(有機化合物)と続く。
その細部をみると様々な構成元素が存在する。
どのように散らばっているだろうか。
↓
炭素:炭水化物(糖質)、脂質、タンパク質、核酸
窒素:タンパク質、核酸
リン:リン酸カルシウム(骨)、ヌクレオチド(核酸、ATP)
硫黄:一部のタンパク質、ビタミン
Ca:骨、種々の情報伝達に関与
Fe:ヘモグロビン、各種の酵素
などである。
特にCaは筋肉の収縮に関係していて
Caが足りなくなると震えがおきてくる。
副甲状腺などを手術でとるとCaが足りなくなる。テタニーなどの手の震えなどが起きてくるのもこのためだ。
リンなどは『リン循環』というものが自然界に存在する。
主に土壌中や水中に存在し、多くは動物の遺骸に閉じ込められたり、深海へ堆積したりする。(堆積循環)飲水などで我々が摂取する。
ちなみにカップヌードルにはリンが多く含まれており摂取されるのだが、牛乳とカップヌードルを一緒に食べてしまうとこのリンが沈殿してしまいうまく摂取できなくなる。(牛乳のCaと結合しリン酸カルシウムとなってしまう)
リンの取りすぎは心血管障害にも関連するためよくないとされるので牛乳をいれてみるのもよいのかもしれない。
炭素に至っても『炭素循環』がある。
これらは『ガス循環』が主である。化石燃料の燃焼により大気に放出され大気中、海洋にプール、植物により吸収され、我々の体に入り、CO2として呼吸で排出される。
そのほかにも窒素などには『窒素循環』がある。
冒頭において食物網の話をだしたが、注目する元素によってその流れは大きく変わることを意識したい。
食物連鎖と病気
動物を食べると言うことは元素の摂取と考えても差し支えはないだろう。
生体として異種のものを摂取することは生物濃縮を始めとしてすくなからずリスクがある。
生物種が異なると、ある生体では常在して平気なものがとたんに毒となる。
摂取の例ではないが、動物から媒介するいくつかの有名な例をあげよう。
『シロアシハツカネズミ』
:おしっこなどにウイルスがある
げっ歯類の生物である。
病気:ハンタウイルス肺症候群
腎症候性出血熱
彼らは松の実が増えたことで数が増えてウイルスもそれにつれて広まった。
『ヒトスジシマカ』『ネッタイシマカ』
病気:デング熱
岩手県北部、青森県南部が北限とされている。
熱帯地域は特に気を付ける必要がある。
動物を媒介にする病気というものは非常に多く、われわれと生物学的違いを感じざるを得ない。
不用意に動物と触れるのも考えものであり、時に大規模な感染症にも発展しかねない。
それぞれ適正化された共生が存在するのだ。
感染症の流行と現代構造
現在は昔に比べ新たな感染症が生じやすいと言われている。
それは
・ウイルスの進化
・密度の高い社会構造
・人口増加
・グローバル化による世界的な人の移動
・環境の変化:温暖化
・未開の地への開拓
・医療の進歩による自然淘汰が働かない
ことなどが挙げられる。
時には未知の物質が植物などにあり、それが薬になったりするが、当然我々の知らないウイルスもいる。
また人口爆発によって新たな場所に人が広がることで新興感染症が出る。
今回のコロナ禍によって明らかになったのは、日本がいかに感染症病棟が少なくなっていたかだ。
それはSARSもMARSも経験してこなかったことも関係するだろう。
今回のことで見直される時が来たのかもしれない。
生物全体の流れを考え、それは意外にも身近につながっていることが確認できた。
我々は地球で生きている限りマクロでもミクロでも循環し合い保たれているのだ。
おしまい。