Choosing wisely

ふと思う疑問

 

私たちが行う医療はやみくもに提供できるものではない。

侵襲が伴えば身体は痛み、精神は削られる。

それでもなお治療効果が上回り、今まで感じていた苦痛が除去されたり、解決の糸口が見えれば救われたような気がして、自身の選択は間違ってなかったと認識するのだ。

いわゆるリスクとベネフィットである。

一方で医療を行う上ではリソースが必要である。人的リソースや費用の面でのリソースも当然かかり、一定時間内で割り振れる分には限界がある。

なにかを手厚くしたり、本来いらないかもしれなかったものは他の時間や労力を奪うことにつながりかねない。

また、本来必要のなかったかもしれない検査や治療が思わぬ有害事象を引き起こすことだって少なくない。

 

適切な医療とはなにか?適切な選択とはなにか?

Choosing wiselyについて考える。

 

Choosing wiselyの概略

この活動に関しては日本においても2016年に組織団体が立ち上がっている。

以下に抜粋を記す。

 

Choosing wisely

医療者と患者が、対話を通じて、科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要で、かつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)の“ 賢明な選択” をめざす、国際的なキャンペーン活動。

Choosing Wisely のルーツは、米国内科学会、米国内科専門医機構 (ABIM)財団、欧州内科連合が主導して2002 年に公表された「新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章」にさかのぼります。その後、医師憲章の精神を実現するため、ABIM財団主催のフォーラムが毎年開催され、2011年に”ChoosingWisely”という言葉が初めて登場しました。「ポリファーマシー(薬剤の多剤併用)」や「過剰診断」が世界的な問題になりつつある中、医療者が専門職としての原点に立ち返り、“賢明な選択”を実現するために立ち上がったのです。

 現在までに、カナダ、イタリア、スイス、イギリス、オーストラリア、日本など各国に、 Choosing Wisely の輪が広がっています。さらに、国際的な協力関係を深めるため、Choosing Wisely Internationalが組織されています。

日本では、総合診療指導医コンソーシアムが、以下に挙げる”5つのリスト” を発表しました(GenMed. 2015; 16: 3-4.)。

1.健康で無症状の人々に対してPET-CT検査によるがん検診プログラムを推奨しない

2.健康で無症状の人々に対して血清CEAなどの腫瘍マーカー検査によるがん検診を推奨しない

3.健康で無症状の人々に対してMRI 検査による脳ドック検査を推奨しない

4.自然軽快するような非特異的な腹痛でのルーチンの腹部CT検査を推奨しない

5.臨床的に適用のないル-チンの尿道バルーンカテーテルの留置を推奨しない

1). choosing wisely japan https://choosingwisely.jp/より抜粋

 

 

またChoosing wiselyの6原則として以下が挙げられます。

1、臨床医主導:政府や保険者主導ではない。このことは臨床医と患者の信頼を維持する上で特に重要

2、強調すべき基本メッセージは、ケアの質と有害事象の予防であり、費用削減ではない

3、臨床医と患者のコミュニケーション:患者に焦点を当て、患者の関与を促す

4、根拠(エビデンス)に基づく:推奨は根拠に基づくこと、また継続的に見直すことによって、信頼性を保つ

5、他職種連携:可及的に医師、看護師、薬剤師、その他の医療職を含める

6、透明性:推奨作成プロセスの公開、利益相反の明示

Levinson W, et al. BMJ Qual Saf. 2015;24:167-174.

 

 

簡単にいえば「根拠が乏しいまま見直さないでやってることはありませんか?ちゃんと見直しましょう!」ということである。

 

 

Choosing wiselyの効果

Choosing wiselyが改善に寄与する条件2)として

・意思決定の際にリストを順守する

・低価格でケアの質を改善する

とされている。

 

一方でChoosing wiselyが行動を変容させない理由もあがっている。3)

・患者が検査自体に期待のような価値を感じ検査しないことに納得しない

・収益構造

・苦労と効果の不釣り合い

・現場感覚との乖離

・真に必要なことまで奪う恐れ

・適切なフィードバックや検証がない

・エビデンスが不十分

・適切と思われる指標がない

・認知度が低い

2)Admon AJ and Cooke CR. Will Choosing Wisely® improve quality and lower costs of care for patients with critical illness? Ann Am Thorac Soc. 2014 Jun;11(5):823-72.

3)Atkinson P et al. CJEM Debate Series: #ChoosingWisely – The Choosing Wisely campaign will not impact physician behaviour and choices. CJEM. 2018 Mar;20(2):170-5.

 

 

また日経メディカル(2016/10/26)にて

Choosing wisely Canada代表のレビンソン氏の講演を紹介しており、その中で

『そもそも、医療従事者は患者に対し、なぜ過剰な医療行為を行ってしまうのか。〜〜背景にある医療従事者の心情として、

(1)「少しでも不安を取り除きたい」という患者の要望に応えたい、

(2)新たに登場した検査や治療方法に期待している、

(3)何もしないよりはましだろう、

(4)今までその方法でやってきた、

(5)行わなかったことにより罪を問われるのを避けたい、

(6)検査を行うほど儲かる

――などを挙げた。』

と記載されている。

 

なるほどその通りである。

技師の業務に当てはめてみると特に根深いのが(4)今までその方法でやってきた、(5)行わなかったことにより罪を問われるのを避けたい、ではないか。

この場合罪というより批判だろう。

 

Choosing wiselyはこうやってみると医療実態の反映だけではなく、人間の心理と闘っている側面もあるようだ。

実態の反映は時間の問題で、着実に解決されると思われるが、難しいのは人の気持ちを科学で抑えることである。

 

技師におけるChoosing wisely

技師の業務に、根拠の乏しいまま行われていることはないだろうか?

いわばChoosing wisely in Radiological Technologyである。

 

例えば一般撮影領域においてはまだまだ多いと思われる。

「今までこの角度で撮影してきた」

「Drから文句をいわれたことはない」

「撮影法を変えて責任がとれるのか」

「昔の本にはこう書いてある」

 

医療は着実に進んでいて、昨日の常識は今日の非常識だ。

 

 

では具体的にどんなアクションがおこなえるだろうか?

MRIでの苦痛に耐える中での過剰なSNや追加のコントラストは必要だろうか?

ポータブルにおけるカセッテ表面はそれほど汚染されないという報告もあるが、どれだけの頻度でふくのか。

手術計画が十分に行える写真なのに、関節の抜けが甘いとして再撮影はするだろうか?

インジェクターから少量の造影剤を注入して様子をみてしまう行為はなぜなくならないのか?

 

現状でChoosing wiselyが行えているモダリティは被ばく管理だけな気がする。(そもそも〜しない、が最も効果を及ぼす分野であるため当然の帰結だが)

 

医療の報酬系に関して、我々の業務はごく一部であるため大きな変化を及ぼさない分、それによって振り回されることなく、技術面を科学的に解明してやめることができるという強みがある。

(もちろんオーダーは医師指示に準じるが、撮影手順においては科学に準じることができる)

 

そして学会側で大切なことは、新しい知見をためるばかりではなく(それももちろん重要だが)、科学的検証から得られた「Don’t〜」「Should not〜」の論文を排出し、リソースの再配分を進め、新たな患者利益の追求を進めるべきである。

 

このグレーゾーンを白黒はっきりつける作業は地味ではあるが、今後の技師業務にとって重要であり、放っておくと静かに蝕んでくるように思えてならない。

 

おしまい。

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