医学研究の基本

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日本の論文数の変化の特徴

文部科学省科学技術・学術政策研究所より

科学技術・学術政策研究所 (NISTEP) - 「地域科学技術指標2021」[調査資料 No.339]を公表しました(3/29)
「科学技術・学術政策研究所」は、国の科学技術や学術振興に関する政策立案プロセスの一翼を担うために設置された文部科学省直轄の国立試験研究機関です。

 

日本の論文数の推移は2000年までは伸びてきているが

そこで頭打ちとなっている。

主要国論文数の中でも日本は伸び悩み、

中国は飛躍的に数を伸ばしている。

 

アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国とみても

どこも堅実に伸びてきているのだ。

 

また総論文数とTOP10%論文数を比較するとまた興味深い。

TOP10%論文数とはいわば「どれだけ質の高い論文を排出しているか」ということである。

 

日本は2000年を境に論文数、TOP10%論文数共に低下。

さらに数としては日本は 論文数>TOP10%論文数 だが

 

対してアメリカ、イギリスは 論文数<TOP10%論文数

であり、優れた論文を排出し続けている。

 

中国に関してはどちらも同じくらいだが

他国に比して圧倒的な増加を続けている。

 

これで日本は科学立国といえるかどうかということだ。

 

分野別にみてみると

基礎医学は若干の伸び悩みがあるが臨床医学研究は伸びている。

工学や物理学の新規論文排出は伸び悩んでいる。

広がる新しい研究

研究の伸び悩みに対してどのような手を打てばいいだろうか。

 

現在、橋渡し研究(translational research: TR)というものが進められている。

研究の世界のゴールはあくまで一般の恩恵にまでつながることである。

 

しかし研究から開発、開発から事業化にいたるまでは大きな壁が存在する。

 

研究から開発に至る際の壁が魔の川(devil liver)

開発から事業化に至る際の壁を死の谷(Death valley)

 

と呼ばれている。

 

ここを橋渡しすることで着実に事業化につなげようという戦略である。

 

これらは日本の論文数が伸び悩んでいることだけにつながっているわけではなく

日本の輸出入にも関わっている。

 

日本の医薬品や医療機器の輸入額がどんどん膨れ上がっており

赤字が増えているのだ。*

国内における新たな技術の創出を促し、輸出を増やす必要があるのがわかるだろう。

*日本貿易振興機構貿易統計データベースより

 

そのため現在国内では橋渡し研究を推進する様々なプログラムが進められている。

PMDAやMEXT(文部科学省)、MHLW(厚生労働省)AMED日本医療研究開発機構などがその代表である。特にAMEDは日本版NIHともいわれている。

研究不正と特定臨床研究

降圧剤のデータ操作などで有名なディオバン事件が代表とするところだが

研究不正は国にとっても大きな痛手を残す。

 

研究不正にはどのようなものがあるか:

・特定不正行為(捏造・改ざん)

・利益相反(COI)非開示(COI:研究者の社会的責任と企業等から得る利益が衝突すること)

COIは悪いことではなく、当然起こり得ることではあるのだが、それを開示しないということが問題である。

COIがある場合はそれを加味して研究内容を判断すればよい。

 

特定臨床研究とは何か:

企業から資金提供をうけるもの、未承認または保険適応外の医薬品などを使うもの。

認定臨床研究審査委員会での審査・監査が必要となる。

 

研究不正をしないためにも

  • ヘルシンキ宣言
  • 人を対象とする医学研究に関する倫理指針
  • 臨床研究・疫学研究に関する倫理指針
  • 動物実験等の実施に関する倫理指針
  • 改正個人情報保護法
  • 各施設による倫理委員会での審査
  • 所属学会における利益相反の開示

などが求められていく。

守るべき倫理

ヘルシンキ宣言

基本原則:

被検者の生命・健康・プライバシー・尊厳の尊重

適切な科学的知識・情報・実験に基づいた研究

研究計画書の策定と倫理審査委員会での承認

自由意思によるインフォームドコンセントの取得

利益相反の明示と倫理的義務の行使など。

 

参考:医療倫理の成り立ち

 

研究を行うに当たる一つのハードルにも感じられるかもしれないが

これらを踏まえることにより、患者自身を適切に保護することにもつながる。

 

全国学会に演題を出す際は頻繁に考える機会があるかと思われるが

地方会で細々と行われるものも倫理観を忘れてならない。

 

また論文化した際には、その内容とデータの取り扱いに責任がつきまとうようになる。

だからこそ研究のスタートは堅実に切りたいものである。

 

おしまい。