一次脳卒中センター(PSC)
脳卒中は「専門性」と「時間との闘い」の両立が必要です。
在住地域による医療の発展度合いの違いで受けられる脳卒中診療レベルが異なる可能性があります。
どこに住んでいても同じような治療を受けることができるような「均てん化」が必要になってきます。
遺伝子組換え型組織プラスミノーゲン活性化因子(recombinant tissue plasminogen activator:rt-PA、アルテプラーゼ)は効果は劇的ですが、場合によっては出血を起こしてしまうこともあります。
そのため適正な使用を広めるためにある程度の質の維持となるような基準を設ける必要があります。
【認定基準】
一次脳卒中センター(PSC)は下記の8項目をみたすことが求められる
- 地域医療機関や救急隊からの要請に対して、24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療(rt-PA静注療法を含む)を開始できる
- 頭部CTまたはMRI検査、一般血液検査と凝固学的検査、心電図検査が施行可能である
- 脳卒中ユニット(SU)を(注1)有する
- 脳卒中診療に従事する医師(専従でなくてもよい、前期研修医を除く)が24H/7D体制で勤務している
- 脳卒中専門医1名以上の常勤医がいる(注2)
- 脳神経外科的処置が必要な場合、迅速に脳神経外科医が対応できる体制がある
- 機械的血栓回収療法が実施出来ることが望ましい
実施できない場合には、機械的血栓回収療法が常時可能な近隣の一次脳卒中センターとの間で、機械的血栓回収療法の適応となる患者の緊急転送に関する手順書を有する - 定期的な臨床指標取得による脳卒中医療の質(注3)をコントロールする
注1)脳卒中ユニット(SU)とは、「多職種からなる専属の脳卒中チームが配属され、他疾患と明確に分離された脳卒中患者専用の病棟(または病床)」と定義する
診療報酬上の脳卒中ケアユニット(SCU)は脳卒中ユニット(SU)に含まれる
注2)暫定期間を設け、脳卒中専門医をrt-PA講習受講後の脳神経外科専門医もしくは神経内科専門医で代行可能とする
注3)rt-PA静注療法施行例と機械的血栓回収療法施行例のデータ(症例数と3ヵ月後のmRS)提出
*一般社団法人 日本脳卒中学会ホームページより抜粋
現在日本脳卒中学会で認定施設が公表されています。
自分の住んでいる地域で、どこに認定施設があるかを把握しておきましょう。
放射線技師としては、CTまたはMRIという、「または」が気になります。どちらも必要性が高いように思えますが。そして血栓回収が望ましいとしてるのは血管造影装置Angioが高額であり買えない施設に配慮しているということでしょうか。
しかしそれでも地域の実情によっては医療の質が単独の病院では確保できない例もあります。マンパワーの問題もありますから、医師がいても1人で24h/7Dを回すのは体力的に不可能でしょう。ブラックすぎます。
そのためネットワークを組んで対応することで認定としているようです。
一次脳卒中センター(PSC)ネットワーク
単独で一次脳卒中センター(PSC)の認定要件を満たすことが困難な複数施設がネットワークを組み、24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療(rt-PA静注療法を含む)を開始できる場合に認定します。
上のPSC認定の文章から無くなったところ、異なるところを赤線の取り消しや色分けをしてしめします。
【認定基準】
- 地域医療機関や救急隊からの要請に対して、
24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療(rt-PA静注療法を含む)を開始できる
自施設単独で24時間365日である必要はないが、ネットワーク間で24時間365日が可能 - 頭部CTまたはMRI検査、一般血液検査と凝固学的検査、心電図検査が施行可能である
- 脳卒中ユニット(SU)を(注1)有する
- 脳卒中診療に従事する医師(専従でなくてもよい、前期研修医を除く)が
24H/7D体制で勤務している - 脳卒中専門医1名以上の常勤医がいる(注2)
- 脳神経外科的処置が必要な場合、迅速に脳神経外科医が対応できる体制がある
- 機械的血栓回収療法が実施出来ることが望ましい
実施できない場合には、機械的血栓回収療法が常時可能な近隣の一次脳卒中センターとの間で、機械的血栓回収療法の適応となる患者の緊急転送に関する手順書を有する - 定期的な臨床指標取得による脳卒中医療の質(注3)をコントロールする
- 自施設も含めてPSCネットワークを統括する1つの責任施設が存在する(注4)
注1)脳卒中ユニット(SU)とは、「多職種からなる専属の脳卒中チームが配属され、他疾患と明確に分離された脳卒中患者専用の病棟(または病床)」と定義する
診療報酬上の脳卒中ケアユニット(SCU)は脳卒中ユニット(SU)に含まれる
注2)暫定期間を設け、脳卒中専門医をrt-PA講習受講後の脳神経外科専門医もしくは神経内科専門医で代行可能とする
注3)rt-PA静注療法施行例と機械的血栓回収療法施行例のデータ(症例数と3ヵ月後のmRS)提出
注4)PSCネットワークの責任施設はPSC認定施設でなくても可
*一般社団法人 日本脳卒中学会ホームページより抜粋後、一部改変
完全に諸条件は同じで勤務体制だけ緩和させるかのような内容です。
例えば、「水曜や日曜だけそちら(ネットワーク内の病院)で誰か医師待機してください!あとはこちらでやりますから!」といえば成立するわけです。
したがって、この背景にはコメディカル側がいくら大変でも、連携の末楽になるかといわれれば連携したとしても実情は変わらない、ということになります。
当然救急隊要請以外のwalk-in(患者・家族独自の判断で駆け込む)もくるわけですし。
技師が考えることとして
体制がさほど変わらずとも機械の質は違います。
そして技師の腕も変わります。
大きな差かといわれれば、そこは機械のオートメーションが一定程度補完するので医師の専門医/非専門医ほどではないかもしれませんが
脳卒中、特に脳梗塞は時間との勝負であり一連の流れの中での動きが時間に影響しますので
機械とは関係ないところの動きも問われてくるわけです。
そういった時に複数技師の質の均てん化、教育体制が問われるでしょう。
ネットワーク内で
A病院は非常に準備がテキパキしていて医師の治療の流れを止めることなく、いつきても誰もが同じようであり、ストレスフリーに治療できる。
B病院はことあるごとに準備が後手後手で「あと5分まってください」「少しまってください」の連続であり、人によってムラがあり、イライラしながらも思い描いていた流れで治療ができないため、少しでも早くするためにやれることを先にやろうとして頭の中で流れの再構築をすることで、選択の増加による脳の疲弊が起こることで、ミスの誘発さえ懸念される状態となる。
たとえアウトカムに統計的有意な差がでないとしても(いや、もしかしたらでるかもしれない)、どちらを行うべきかは明白です。(少し誘導的に書きましたが)
地域のことを思うなれば、ネットワーク内で優秀な技師が、複数施設間で異なる装置の特性を鑑み、画像の調整を行ったり、撮影法の指導をすることも有用でしょう。
時にはA病院で運ぶ予定だったのが急遽ネットワーク内のB病院に運ばれるとなった時に、A病院の医師がB病院に遅れて手伝いに駆けつけることだってあり得るはずです。
その時に病院の特性たっぷりの違いある画像を見せられて診断しやすいでしょうか。
A病院にいっても、B病院にいっても同じように読影できて、わずかな所見を「うちの画像とは見た目がちがいすぎるからなぁ・・アーチファクトかもしれない」
だとせず
「ここは連携しててうちの画像と同じような感じにしているんだっけか・・普段の感じだとこれは所見でいいはず」となるようにすると不確かさが減り、診療により寄与できるのではないでしょうか。
ポイントとしては、
・撮影以外の動きの洗練
・技師間の技術レベルの均てん化
・地域間の画像特性の均てん化(画質(SNRや分解能)ではなく画像の特性(CNRや造影能))
が問われるでしょう。
おしまい。