眼科壁骨折におけるCTと普通X線撮影法による所見の比較検討
Orbital wall fractures: A comparison of computed tomography and conventional views
単純X線とCTの所見の一致度を比較した論文である
古い論文ではあるがいまだに取られているX線の知見を知るためには重要である
対象はコールドウェル法とウォータース法
なお比較対象のCT出力条件はCor5mm, ww800-900, wl10-50である。
基礎知識として押さえるべきなのはコールドウェルとウォータースでは頭部へのX線射入角度が違うため、眼窩壁を見ている場所(描出される場所)も異なるということだ
論文内では以下のように記載されている
コールドウェル
眼窩内壁(前方):後涙囊凌付近
眼窩内壁(後方):篩骨眼窩板後方部分
眼窩底後方:眼窩底が後方で盛り上がり下眼窩裂に移行する部位
ウォータース
眼窩内壁(前方):眼窩内壁前上部
眼窩内壁(後方):眼窩内壁後下方部
眼窩底前方:眼窩底が前方で凹面をなす最深部
結果としてそれぞれの部位における適合診断率は以下の通りである
眼窩底(前方:ウォータースとの比較) | 約44% |
眼窩底(後方:コールドウェルとの比較) | 約37% |
また両者において過剰診断が過少診断を大きく上回っている
眼窩内壁(前方)コールドウェルと比較 | 約45% |
ウォータースとの比較) | 約46% |
眼窩内壁(後方)コールドウェルと比較 | 約48% |
ウォータースとの比較) | 約33% |
篩骨上顎板(コールドウェルとの比較) | 約53% |
なおそれぞれ過剰診断・過少診断ともに少ない
CTと比較して得られた単純X線の骨折存在診断率は下記とされている
眼窩底 | 前方78%, 後方73% |
眼窩内壁 | 前方72%, 後方72% |
篩骨上顎板 | 64% |
以上より眼窩底部は思ったよりオーバーに捉えてしまうことがわかる
また全体的に7−8割の検出が可能である、一定の見逃しを伴う可能性がある
単純X線は大きな骨折と、全体像の把握、簡便さ、フォローにおける患者負担の少なさという点においては非常に有用だが
ある程度の見落としが存在することを念頭に置かなければいけない
もちろん上記は正しく取られた場合における結果である
また今のFPD、最新CTであればまた結果は変わるかもしれない
しかし撮る側の技師はこれらの結果を知った上で望むと画像を見る目も変わるのではないだろうか。
日本耳鼻咽喉科学会会報.1993.96(2).175-181.361.