若年性膝OAをMRIから考える

MRI
この記事は約3分で読めます。

紹介論文名:MRI所見からみた若年性変形性膝関節症の特徴東北膝関節研究会会誌.2018.27.17-22

2012年にLuytenらが早期変形性膝関節症を定義してから、その診断への関心が高まっている。

膝OAの治療目標は早期診断からの進行予防に移ってきている。

 

早期OAの診断基準について様々な定義があるが、いずれも膝の臨床症状を伴い

単純X線で関節裂隙の狭小化を認めないものを早期OAと定義している。

 

1, 疼痛

膝関節痛

直近1年で10日以上連続 2回以上

2, XP

単純XP

K-L分類 0-II(骨棘のみ, 関節狭小化なし)

3 軟骨, 半月板, 骨髄 (下記いずれか)

関節鏡 (1)

ICRS grade I-IV 2領域 or II-IV 1領域で周囲softeningかswelling

MRI (2)

軟骨 WORMS 3-6 or BLOKS 2,3

半月板 BLOKS 3-4

骨髄 WORMS 2,3

Luyten FP, et al. KSSTA. 2012

 

本論文は若年者OA患者に対し、WORMSを用いたMRI評価を行い、その病態や特徴を明らかにしている。

 

WORMSとは?

Whole ORgan Magnetic resonance imaging Score

単純X線に現れない微細な変化を捉えるため、膝関節を細かな区域に分けて点数化しMRIを半定量化する手法

上図:WORMSによる分類(High-field MRI exploration of the structural effects of cellular matrix™ on articular cartilage in knee osteoarthritis: A pilot study in 6 patients. International Journal of Clinical Rheumatology.2018.13,5より引用)

方法

本検討では

膝周囲骨切術(AKO)を予定し術前MRIを撮影した症例 26例32膝(外反膝を除く)

若年群(18-64歳)高齢群(>65歳)としている。

男女比、問診・既往歴から見た二次性OAの割合、K-L分類によるOAgrade、WORMSによるMRI評価で二群間の差を比較検討している

 

結果

男女比に有意差なし

二次性OAの割合に有意差なし

K-L分類にも有意差なし

WORMS(total, compartment)にも有意差なし

 

軟骨、骨髄異常像、骨嚢胞、骨摩耗、骨棘の5項目ごとに見ると

骨髄異常像、骨嚢胞では有意差なし

軟骨は大腿骨内側中央外側中央若年群において有意にスコアが高い軟骨変性が強い

骨摩耗はPF関節のscoreが若年群で有意に高い骨摩耗が進んでいる

骨棘は脛骨内側後方、外側前方、膝蓋骨内側、PF全体若年群のscoreが有意に高い骨曲形成が多い

 

まとめ

K-L分類は有意差がないが、WORMSでは有意差が見られた。

→進行期OAにおける微細な変化を描出する上でも有用な評価法

 

若年群ではWORMSにより、X線に現れない微細な変化を描出できる

 

管理人の気持ち

さて技師として気になるのは、この検討は著者の所属が2施設であり少ないこと、MRI撮像条件が明示されていないことから

本対象症例内においては、撮像条件の差によってどれほどWORMSによる拾い上げが異なるかは言及できないということである。

また適切なシークエンスはどうなのか?についても同様である。

医師側があまりMRIに詳しくないと、(2Dか3Dの違いだけで見分けてしまうと)分解能やコントラストはおざなりになり、軽微なhigh intensityはmaskされるだろう。軟骨損傷だってT2prepをいれてなければ当然評価しにくい画像となる。

ただ、このような臨床におけるMRIの使用法や、それによる臨床的な違いを技師側が知ることにより問題点が浮き彫りになることは間違い無い。また機会を改めて膝はどのシーケンスで取るべきか?求められる分解能は?など細かい点について考察したい。

ではまた。